会員の皆さま
これまで、日本ナサニエル・ホーソーン協会では、『緋文字』出版150周年を記念した齋藤忠利編『緋文字の断層』(2001)、ホーソーン生誕200年を記念した川窪啓資編『ホーソーンの軌跡―生誕200年記念論集』(2005)、ホーソーン没後150周年を記念した成田雅彦・西谷拓哉・髙尾直知編『ホーソーンの文学的遺産―ロマンスと歴史の変貌』(2016)を出版してまいりました。
当協会は1981年(昭和56年)10月17日に設立され、本年で40周年、来年5月の大会は第40回という大きな節目を迎えます。そこで、総会でもお知らせしましたように、これを記念した論集を刊行したいと考えております。
論集のタイトルは仮題ではありますが、本年度の全国大会シンポジウムのタイトルを一部拝借し、『今なおホーソーンを読む理由―倫理か、謎か、文体か』(仮)としてみました。昨年から今年にかけて世界は新型コロナウイルスの感染拡大に翻弄されてきましたが、このコロナ禍は私たちの生活のあり方を変えただけではなく、個々人の営みの必然性をもあらためて問いかけるものであったと思います。これを機に、文学研究者もみずからの学問のあり方を見直すこととなりました。
そのような中で、当協会も40周年という節目に当たり、今一度、なぜホーソーンの文学を読み続けているのか、あるいは読み続けていくのか、その理由を問い直すことを通して、19世紀の人間と21世紀の我々をつなぎ、ともすると昨今のさまざまな災害や苦難に打ちひしがれているように見えながら、その実、なんとか生き延びている人間精神の弾性・復元力(resilience/renaissance)を再確認してはどうかと考えた次第です。我々が文学を読む理由はさまざまだと思われますが、本書では、ホーソーンを読む理由を、
〈倫理〉 「心の真実」、歴史的・社会的状況との対峙、宗教、環境倫理等を含む、人としての生き方、モラルに関わる考察
〈謎〉 作品中、あるいは作家の人生における謎、不可解さへの推理的興味、人間的関心からの考察
〈文体〉 読者をひきつけてやまない文章の力、小説の形式、ジャンルの精密な読み解き
という三つの観点から考察してみようというものです。簡単な要項は以下の通りです。
論集タイトル:『今なおホーソーンを読む理由―倫理か、謎か、文体(スタイル)か』(仮)
出版社:未定
刊行予定:2022年12月
論文提出期限:2022年6月末日(2021年11月末までにプロポーザルを提出)
論文枚数:原稿用紙換算で40枚以内
(Wordの校閲機能文字カウントで、スペースを含め、16,000字以内)
編者:西谷拓哉、髙尾直知、城戸光世を予定
出版費用:現在のところ各自負担を予定
本論集への参加を希望される方は、仮のものでけっこうですので、論文のタイトルと概要を400字程度で記したプロポーザルを西谷拓哉(takuyan@kobe-u.ac.jp)宛てに、2021年11月30日(火)までにお送り下さい。プロポーザルは上記の三つの観点に添うものであればありがたいのですが、ホーソーンを読む新たな理由を提示するものであれば、上記以外のものでも大歓迎です。
プロポーザルを拝見し、執筆をお願いする方には、後日、詳しい執筆要領をお送りいたします。ただし、ご提出いただいた論文がそのまま論集に掲載されるということではなく、掲載は編者による査読を経て決定されることをご了解ください。また、編者の判断で会員以外の方に寄稿をお願いする場合もあることをご了承ください。
協会のこれまでの歩みを跡づけ、次のステップへとつながる充実した論集としたく、会員の皆さまからの投稿を広く募りたいと思います。是非、ふるってご応募くださいますようお願いいたします。
2021年9月11日
会長 西谷拓哉